快楽の象徴

2021/05/04
ある船が航海を続けているとき、

風が強く、波が高くなって、ひどい大しけとなり、

船は航路をはずれてしまった。




朝になると、海も静かになって、


きれいな入江のある島がそばにあった。


船は入江にいかりをおろし、しばらく休むことにした。



その島にはきれいな花が咲き乱れ、

おいしそうな果実をつけた樹々があって、

きれいな緑の木陰をつくり、

鳥がやさしくさえずっていた。




船の客たちは、5つのグループに分かれた。



第一のグループは、


自分たちが島に行っている間に、


適当な風が起こって船が出ていてしまうかも知れないので、


いくらこの島がきれいでも、


われわれは自分たちの目的地に早く行きたいと言って、


全然上陸せず、船に残った。




第二のグループは、


急いで島に上陸して、

かぐわしい花の香りをかぎ、

緑の木陰でおいしいくだものを食べて、

元気を回復すると、すぐに船に戻った。




第三のグループも上陸したが、



島にあまり長く居すぎたために、

ちょうどいい風が起こったとき、

船が出航すると思って、

あわてて駆け戻ってきたので、

持ち物をなくしたり、

自分たちがせっかく占めていた

船の中のいい場所も失ってしまった。




第四のグループは、


風が起こって船員たちがいかりを巻き上げるのを見たけれども、


まだ帆が張られていないからとか、


船長が自分たちを残して出航するはずはないとか、

いろいろな理由をつけて、

ずっと島にいた。


しかし、本当に船が港を出ていこうとするのに気がついて、


あわてて泳いで船の舷側を上ったために、


岩や船の回りなどでケガをして、


その傷は、航海が終わるまで治らなかった。





第五のグループは、


たくさん食べて、美しい島でうかれすぎ、


船が出航のときに鳴らす鐘も聞こえなかった。



そのため、



林の中にいる猛獣に食べられてしまったり、

毒の入ったくだものなどで病気になって、

そのうち全滅してしまった。





あなたならどのグループに属しますか?




この話しの中に出てくる船は、

人生における善行を象徴しています。



島は快楽を象徴しています。





第一のグループは、人生で快楽を少しも味わおうとしなかった。




第二のグループは、


少しは快楽にひたったけども、

自分が船に乗って目的地に着かなければならないという

義務は忘れなかった。




第三のグループは

快楽にひたりすぎずに戻ったけれども、やはり少し苦労した。




第四のグループも戻ったけれども、

戻るのが遅かったから、目的地に着くまで傷が消えなかった。





しかし、




人間がおちいりやすいのは、



第五のグループ



一生見栄だけのために生きたり、



将来のことを忘れてしまったり、



甘いくだものの中に毒が入っていることを知らずに食べたりする。